気候変動とリーダー

異なる思考を持つ人が集まる社会では

自然とグループができる

それは大人に限らず子供も同じ

似通った考えを持つ人とグループを作り

心地よい時を過ごす

グループの中にはどことなく舵を切るリーダーが存在する

人生でこの人は信頼できる

この人に付いていきたい 寄り添いたいと

思える人にどれだけ出会うことができるのだろうか

イギリスの政治家マーガレット・ベケットは、環境と安全保障問題が対立する中、気候安全保障論を唱え、二極間の距離を縮める大きな役割を担いました。当時、安全保障の専門家からは「環境問題を安全保障の課題とするのは、環境が不安な状態に陥ることを論じるもので、軍事を前提とする安全保障概念に混乱を招く」とされていましたが、その概念を変えたのがベケットでした。

当時、ブレア政権で環境・都市問題大臣の後外務大臣に就任し、イギリスの気候安全保障論外交を推進していました。2006年のベルリン演説では「気候と安全保障」をテーマに気候安全保障論を英外交の一つの柱とすることを宣言。この演説では、「温暖化が進むことで収穫量が落ち、アフリカ・中東・南アジアで食糧供給が悪化。水資源問題では南アジア・中東・中央アジアで特に深刻な事態が生じる恐れがあり、海面が50センチ上昇すればナイル・デルタで200万人、1メートルならバングラディシュで2500万人の難民が発生。環境劣化ですでにサブ・サハラから経済難民が欧州海岸に押し寄せている。これは単なる環境問題でなく、防衛問題である」と述べました。

「気候安全保障(climate security)」という言葉を立ち上げたのもこの演説内でのことです。気候の不安定化が、既存の懸案をさらに深刻化させることになることを強調し、世界中が今よりもさらにより良い生活を求めることは、将来の生活を破壊することにつながると述べました。さらには、安定した気候はグローバルな公共財であり、今後はさらに広い意味での政治連合が必要。それは環境問題にとどまらず、防衛の問題であると訴えました。

「気候変動は国際的な安全保障の問題であり、外交のコアになるべき。環境省だけでなく、首相、エネルギー相、外相、国防相が定期的に会合を持つべきである」との言葉は、10数年経ってもまさにその通りであり確信をついているように思います。この演説をきっかけに、2007年4月、安保理で初めて気候変動と安全保障に関する自由討議(議長国はイギリス)が行われ、ベケットは「今日、自由討議を行うことで、安保理は国連総会、経済社会理事会などの諸権威に対し、先取権をとろうとするものではない」と述べ、島嶼国、フランスなどEU諸国はこの考え方に賛成しました。同年にはノーベル平和賞がIPCCとアル・ゴア元米副大統領に送られるなど、ベケットの演説は気候変動問題の見方を大きく変える歴史的な演説だったことが分かります。

その時主導権を握る政治家が何者かによって、外交は一変します。当時、外交には場外とも言える環境・都市問題大臣から戦力的に外務大臣へと横滑りしたベケットの行動は今日の気候変動問題に外交の概念を加えるという大きな転換を果たしました。

日本の気候変動問題のリーダーと言える人はこれまで存在したか

今後存在し得るのか

ふと実業家ROLANDさんの言葉を思い出した。

一つの業界を変えるのは制度の改革とか取り組みではなくて一人のスターだと思う

同感である。

難しいことでなく感覚的なもの。

そういう目に見えないものに人は動かされるのだろう。

参考

Margaret Beckett:Speech in Berlin, 23 October 2006